学会案内

日本医学哲学・倫理学会について

会長挨拶

瀬戸山 晃一
日本医学哲学・倫理学会 会長
(2023年~2026年)

京都府立医科大学大学院
-医学研究科 医学生命倫理学主任教授
-医学科 人文・社会科学教室教授

この度、学会長を拝命しました京都府立医大の瀬戸山でございます。過去を振り返ると2005年の産業医大の大会から参加させていただいて約20年近くが経ち、この度、会長という大役を仰せつかることになり、その重責に身が引き締まる思いでおります。これまでの本学会運営委員長2年間、組織運営委員長3年間、副会長3年間の経験を活かし、これからの3年間、役員や会員の諸先生方のお力添えの下で本学会の更なる発展と活性化に微力ながらも努めて参りたいと思いますので、どうぞよろしくお願い申し上げます。
新会長としての学会運営の抱負について述べさせて頂きます。学会が今後生き残り、活発な活動を続け、さらに発展していくためには、新入会者が退会する会員数を上回り、特に若手会員を増やし育てていき、会員が学会に所属するメリットを感じて頂ける魅力と活気のある学会である必要があると考えます。私の会長としての役割は、まず第1に次世代を担う会員の育成にあると考えています。
そのために新しい取り組みとして、若手会員や新入会員育成支援制度を導入したいと考えています。
コロナ以降、学会大会はリモートになり、2022年度より対面開催に戻りましたが、懇親会の機会はなくなり、出身大学や地域の研究会以外の会員と知り合い知的交流をする機会が少なくなってしまっています。学会に所属する魅力は、いろんな会員に出会い研究の話をしたり、それが共同研究に発展したりすることにあると思います。また先輩の先生にいろいろキャリア相談をしたり、自分の研究を知っていただく知的ネットワーク拡大の機会に学会の懇親会や2次会はなっていたように思います。ポストコロナ時代において、若手会員や新入会員が、面識のないキャリアモデルとなるご活躍されている先生方とお話ししたり、研究やキャリアの相談に乗っていただいたり、特に本学会は学際的な学会でありますので他分野の先生と出会い知的交流の機会となればと考え、若手や新入会員の支援制度を導入させたいと考えています。
また第2に、特に若手や研究者としてスタートアップの会員の大会での優秀な口頭発表を表彰する制度の新設を提案したいと考えています。
第3に、国際大会を開催して2024年で10年を迎えます。新型コロナ感染症蔓延の影響もあり国際大会は見合されてきましたが、これから私の任期中に国際大会開催を実現したいと考えています
第4に医学哲学と医療倫理学の教育の重要性を学会として発信していくために現在の教育ワーキングを教育委員会として継続的に発展させ更なる活動の活性化を図りたいと思います。
第5として、他学会で導入されているような、次世代を担う高校生や大学生も入会できるようなジュニア会員制度の新設を検討したいと考えています。
それから最後になりますが、学会の信頼とステイタス向上のために本学会の法人化の検討を行いたいと考えています。
学会の持続的発展と活性化のためには、会員の皆様のご協力無くしては実現せず、私の会長としての抱負や方針も言葉だけに終わってしまいます。理事会が一丸となって学会の更なる発展のために努めて参りたいと思いますので、評議員や会員の皆さまのご理解とお力添えを何卒宜しくお願い申し上げます。

2023年10月


学会誕生までの経緯

「日本医学哲学・倫理学会」の誕生までの経緯については,『日本医事新報』(第3055号.昭和57.11.13.)によって紹介されたため,それをそのまま転載する.拾読して頂ければ幸いである.

日本医学哲学・倫理学会の誕生

医学・歯学・薬学と哲学・倫理学・宗教学などとが関わりあう諸問題の研究・教育を進め,その発展をはかることを目的とした「日本医学哲学・倫理学会」がこのほど発足し,その第1回全国研究大会が,今月27日,28日の両日,北九州市の産業医大で開かれる.この学会は,初代の会長に選ばれた東京医大教授の高間直道氏らの提唱により,全国国公私立の医・歯・薬系単科大学の哲学・倫理学・宗教学担当教授約50人が中心となって設立されたもので,医の倫理の高揚,医学教育における人間教育の重視が叫ばれている折柄,医界に多大の関心を呼ぶものとみられる.

本学会発足までの経緯のあらましを紹介すると,前記の高間東京医大教授の呼びかけで,昭和55年11月に,東京医大で第1回全国医歯系大学「哲学」「倫理学」担当者会議が開かれた.同会議の開催の趣意は,「わが国の医歯系大学には国公私立という設置形態の差はあっても,内容に差があってはならず,常に最高水準の医学教育を施すと共に,複雑化した現代社会において人間として且つまた医師としてどう生きるかという哲学・倫理学,並びに応用科学でもある医学をどう捉えるか,ということを確立するような医師を養成する責務があり,そのためには哲学や倫理学をいかに教えるかという問題はもとより,医学の学際的な研究成果を常に導入すると共に,従来の医学が目標としてきた人間の健康と疾病の克服という問題のみならず,人間の生存や幸福を追求する方向をとり入れる必要があろう」というものであった.

第2回会議は,薬系大学と「宗教学」担当者を含めて,昨年11月,大阪医大で開かれ,この2回の会議で,医歯薬系大学における哲学・倫理学・宗教学の教育の仕方や役割,或は学生たちに医師・歯科医師等としての自覚を促すために,それらの科目をいかに生かすか,更には医学と哲学・倫理学を結ぶ点について討議を重ねて来た結果,昨年の会議で日本医学哲学・倫理学会の発足が議決され,今春,会則・役員なども決り,発足したものである.

同学会は,年1回,全国研究大会・総会を開くほか,日本学術会議との連絡,国内外の関連学会との交流,学会誌の発行(年1回)を行うこととしている.

この27,28日の第1回大会は,個人研究発表のほか,池見酉次郎九大名誉教授の特別講演「医歯薬学生教育における哲学・倫理学の役割」,シンポジューム「現代における医学と哲学との接点」,土屋健三郎産業医大学長の挨拶(同大学教育方針の紹介を含む)などが行われる.高間学会長は「学会はともすると形式的,権威主義的になり易いが,ざっくばらんでアット・ホームの雰囲気に終始したい」と抱負を語っている.第1回大会の成功と学会の今後の発展を大いに期待したい.

(『医学哲学・医学倫理』創刊号に寄せられた高間直道先生の言葉)

『医学哲学・医学倫理』

本誌は1981年設立の「日本医学哲学・倫理学会」の学術機関誌である.現代医療の飛躍的革新が,洋の東西を問わず,人間の社会に深刻な波紋(生殖技術の開発,延命治療,尊厳死,臓器移植等)を投げかけていることは周知の事実である.これらの問題を考究するためには,哲学,倫理学はもとより,医学,薬学,看護学,法学などの専門家による学際的交流と共に,諸外国の研究者との学術交流が不可欠である.

本誌は創刊以来,上述の趣意達成のため努力を重ねているが,研究者は同時に教育者としての任務を課せられており,21世紀を担う次世代の若者たちに,人間社会の過去の叡知と共に将来のビジョンを培う責務を与えられている.科学,技術の画期的業績を背景とする世紀の転換期に当たり,人間の福祉と幸福のため,これらの試練をいかに乗り越え,国内外の学際的知見に基づきこれをいかに総合して日本の社会に還元するかが本誌に与えられた使命である.