2005 第23号

(論文)

1. 「理性の共有」としてのインフォームド・コンセント—慢性疾患医療における医療従事者-患者関係のあり方に関する考察— 圓増文
2. 医療におけるインフォームド・コンセントと合意形成 浜町久美子
3. 医療における情報化とインフォームドコンセント 勝山貴美子
4. 自己実現とケア—ケアすることの意味 堀井泰明
5. 看護ケアにおける良心と責任の問題 朝倉輝一
6. うつ患者の「語り」を意味構築する—A・シュッツのレリヴァンス概念から〈社会構築主義〉にアプローチする— 山中恵利子
7. スピリチュアル・ペインは癒されうるか—死生観の転回構造— 後藤雄太
8. 「病いの知」の可能性—プロフェッショナリズムを越えて— 安藤泰至
9. 人格の「潜在性」の問題 前田義郎
10. 性的倒錯の哲学的分析 佐藤拓司
11. 特定病因論再考 村岡潔
12. 澤瀉久敬の医学概論と現代医学 杉岡良彦
(研究報告)
13. 日本における臓器提供をめぐる社会的状況—生体移植の増加と揺れる臓器提供の理念— 今井竜也
(ワークショップの概要)
14. ケアの概念を深めるために(第20回大会) 朝倉輝一
15. 医学部・歯学部における医療倫理教育の現状と課題—医療倫理教育コア・カリキュラムの構築—(第23回大会) 堅則章
(シンポジウム)
◆今、リプロダクティブ・ヘルス/ライツを問う—中絶問題における生命の尊厳と生殖の自由—
16. 中絶論争の行方 丸本百合子
17. 中絶女性に対する医療のまなざし—胎児細胞、胚、卵子が研究資源となる時代に— 齋藤有紀子
18. 決められないことを決めることについて 立岩真也
19. 胎児の道徳的地位と尊厳のに観点から見た人工妊娠中絶の道徳性 奈良雅俊
20. シンポジウム「今、リプロダクティブ・ヘルス/ライツを問う—中絶問題における生命の尊厳と生殖の自由—」のまとめ 小松奈美子・冲永隆子
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2006 第24号

(論文)

1. ヒト胚研究を巡る「人の生命」と「人類への利益」についての哲学的考察 船木祝
2. 日本の着床前診断所見 児玉正幸
3. ハーバーマスと生命倫理−自然倫理学の文脈で− 菅原潤
4. 生体間臓器提供の倫理問題−「自発性」への問い− 堀田義太郎
5. 遺伝学的情報の取り扱いを巡る倫理問題−遺伝学的検査を中心に− 岩江荘介
6. 文化の多様性と「普遍的な」価値−個別と普遍をつなぐ試み− 松岡悦子
7. 全国歯科大学・大学歯学部倫理委員会についての実態調査報告 田村京子
8. 看護実践におけるケアリングの構成概念 工藤せい子・五十嵐靖彦
(研究報告)
9. 夫の死亡後、その凍結精子で妻が妊娠、出産した死後生殖の事例における倫理的な問題点 串信孝
(海外医学教育事情)
10. ドイツの医学教育カリキュラム 今井道夫
(シンポジウム)
◆人格とは何か−パーソナリティ障害の時代を考える−
11. シンポジウムのまとめ 藤野昭宏
12. パーソナリティ障害の時代 岡田尊司
13. 産業保険現場の事例から 野田悦子
14. 人格障害の哲学的基礎づけ−カントの立場から− 佐藤労
15. 人格障害と刑事責任能力−刑事法学の立場から− 朴元奎
(大会テーマシンポジウムの概要)
16. 相即の医療をめざして−西田哲学が生きる医療− 藤野昭宏・藤江良郎・安松聖高・吉田真一
(その他)
17. 大会プログラム
18. 矢次正利名誉会員のご逝去を悼む
19. 冨倉光雄名誉会員のご逝去を悼む
20. 石井誠士名誉会員のご逝去を悼む
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2007 第25号

(論文)

1. 発病モデルと回復モデル —歴史的・理論的検討 田辺 英
2. 精神病、精神疾患の概念をめぐる問題 水野俊誠
3. 研究と診療を区別する二つのモデル——ヘルシンキ宣言からベルモント・レポートへ 田代志門
4. 臨床研究におけるアフターケア倫理  −その理念の提示 山本史華
5. 一つの人生か別の人格か—事前指示の有効性をめぐって— 日笠 晴香
6. 非配偶者間人工生殖によって生まれた子どもの出自を知る権利と戸籍制度 遠矢和希
7. 近藤誠と安保徹が現代医学に問いかけるもの 杉岡良彦
8. 「生理的な嫌悪感」をめぐる混乱 有馬斉
9. 医療制度と市場原理—「公正」という観念から— 森 禎徳
10. ケーススタディに基づく看護職倫理教育の課題と展望 上野 哲
11. カプグラ症候群から開始する他者論の試み —可能世界に住む自己の変異体— 新山喜嗣
12. 他者のパースペクティブを理解する—障害児を出産した母親の語りをレリヴァンス概念を用いて分析する— 山中 恵利子
(研究報告)
13. 医学、社会福祉学、仏教学および栄養学を学ぶ学生の先端医療、生命倫理に関する知識、考え方—質問紙調査の結果より— 横尾美智代・早島 理
(シンポジウム)
◆老いること、衰えること、死を迎えること
14. シンポジウムのまとめ 宮越一穂・霜田 求
15. 死に放擲される老い—事態の深刻さに対する倫理— 天田城介
16. 難病患者と「尊厳死問題」—死についての、自己による事前判断の倫理的妥当性への疑問— 宮坂道夫
17. 衰え死を迎えるがん患者へのケア 田村恵子
18. 死の自己決定と患者の利益 浅井 篤
(ワークショップの概要)
19. 「こころの問題」を抱える子どもをめぐる倫理的・社会的課題 西村高宏
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2008 第26号

(論文)

1. 医療従事者と患者の信頼関係構築に向けた取り組みとしての「目的の共有」 圓増 文
2. 医療組織の倫理的課題としての「信頼」について—エラーを通して考える— 田村 京子
3. ドイツと日本における「赤ちゃんポスト」の現状と課題 阪本 恭子
4. 生の否定に抗して─人工妊娠中絶批判のための一試論─ 後藤 雄太
5. 生命倫理における宗教言説の概念分析 —「神を演じる」を巡って— 鶴島 暁
6. 看護におけるケアをどう考えるか 永田まなみ
7. F.ナイチンゲールの『看護覚え書』における「病者」へのまなざしについて 大北 全俊
(研究報告)
8. 精神科長期在院症例Aの退院経緯の解明 —語彙分析による予備的研究— 村上満子
(シンポジウム)
◆患者の意思決定と家族の役割
9. シンポジウムのまとめ 阿保順子・板井孝一郎
10. 知っておくことと決めること 原 敬
11. 法律学から見た、「患者の意思決定と家族の役割」 稲葉一人
12. 患者の意思決定と家族の関わり 長岡成夫
13. 患者の家族の意思決定における看護職の役割 近藤まゆみ
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2009 第27号

(論文)

1. 野口整体の史的変容—近現代日本伝統医学の倫理生成過程— 田野尻哲郎
2. 統合医療と次元的人間論 杉岡 良彦
3. 功利主義的観点から見た認知的エンハンスメント 佐藤 岳詩
4. 人間の尊厳の射程 小出 泰士
5. チーム医療における不確実なリスクに対する集団的意思決定 屋良 朝彦
6. HPVワクチンの臨床利用をめぐる倫理問題−予防接種義務化とワクチン政策に関する一考察− 福田八寿絵
7. 医療過誤と道徳的運(moral luck)の問題 長田 蔵人
8. 代理懐胎における理にかなう費用の支弁 仙波由加里
9 精神科診断において操作的診断基準は信頼性問題を解決したか 山崎 真也
(研究報告)
10. 死後生殖における社会的合意と日本的特徴についての考察及び最高裁判決への批判 串 信考
(ワークショップの概要)
11. ニューロエンハンスメントの倫理問題 虫明茂
(シンポジウム)
◆薬学と倫理
12. シンポジウムのまとめ 今井道夫・盛永審一郎
13. 薬を創製する人の倫理 原島秀吉
14. 医薬品の承認制はパターナリズムか? 土屋貴志
15. 「科学知識=権力」としての医薬品が内包する倫理問題—薬は布置されているのか? 松山圭子
16. 薬剤師の役割変化に伴う倫理教育の必要性 川村和美
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2010年度公開講座について

市民向け公開講座が2011年2月26日(土)に東京医科大学で開催されます. 続きを読む

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運営委員会 第2回理事会報告(理事会への提案)

20070701

運営委員会 第2回理事会報告(理事会への提案)

 委員長 尾崎 恭一

1.学会の今日課題にふさわしい全国的視点からの入会促進と支部設立支援

(1) 支部設立にむけて

① 重点課題:支部規約モデル案の検討

従来、地域交通圏が支部設立の対象地として上がったが、現候補地の多くは広域圏であり、月例会は困難と思われる。他方、以下の課題での交流の必要性は増しているので、大会前に当該地域の役員等に、年1回程度の研究会合・ML-newspaper等による研究教育交流・科研費講演会主催等、(準)支部活動のイメージとそれに伴う(準)支部規約案文を提案しつつアンケート調査を実施し集約する。

既発表論文・著書・研究ノート等とその批評、等の相互批評、各会員の関連科目シラバスの紹介・関連科目カリキュラム関連提案と批評、[研究]自己紹介エッセイ等(ML-newspaper等)

最終的には支部年次大会等での口頭発表と支部会誌の刊行、講演会主催など。

対象地域:九州、北海道、関西、東海

② 支部会費について 該当地域が上記Ⅰ段階の準支部的な活動を行う場合、必要経費(郵送・ML費)は多くないであろう。そこで、実質的な研究教育活動に専念して頂くため、学会から5万円程度を支援金として実費支給することを提案する。

③ 支部会誌発行について 当初はを内容とするML-newspaperから始め、メールマガジン刊行(希望者が印刷すれば紙媒体の雑誌となるpdf書式等)を目指すこと等を支部準備地域に提案したい。

(2) 会員の少ない地域への支援策について

提案:医歯薬看護系学部の図書館を調べ、学会誌に英文誌目次・入会申込書・地域役員連絡先(本人の了承を得る)等を張り付け、毎年寄贈する。

対象地域:四国、中国等

2.役員選出の理事会内規について

(1) 重点課題:推薦評議員の,特に新設の推薦理事の選考基準

  理事推薦基準案の要点:新理事会で当選受諾評議員から選出。従来の評議員推薦基準である性別・学問分野・勤務部門・地域のバランスの他、次世代育成(①若手に限らない)、②特定方針遂行の視点(理事会承認を前提として1名は会長が特命のため指名できる)。

   期限付き理事は設けないが、2年度目の総会提案は可能とする。

  評議員推薦基準:上記の従来の方針を明文化した理事会内規とする(次世代=若手)。

(2) 学際的学会にふさわしい組織・役員構成について

 福祉(会則第一条)系で今後も評議員当選が叶わない場合、推薦評議員選定の優先分野とする。

3.各機関(長)の役割,権限及び義務について

(1) 部門長及び部門の位置づけを明確にするため,慣行を元に内規案を作成する.

(2) 大会運営について 「全国研究大会に関する内規」に以下の点に留意し補足事項を付け加える

大会長は、総会承認後、第1回調整会議、理事会に出席し、大会準備の方針及び進行状況を報告し、承認をえるものとする。大会準備運営組織として実行委員会を設ける場合、実行委員長は大会長の下に大会事務局=実行委員会を統括し、大会準備を行い、大会長の判断により上記の会議に出席させることができる。

運営委員長と研究委員長は、公選第一期理事会の合意により大会準備運営組織に加わる。それは、大会運営のノウハウを蓄積したり、大会研究テーマの継続性を追及したり、理事会と大会組織との情報共有を促進したりするためであり、議決権等はない。

・ 制定時に要望のあった大会会計事項を補足する。

 

4.著作権学会委譲問題について,事務局と連携して以下の対策を講ずる

(1) 重点課題:著作権の学会委譲問題について,適切な解決策を検討し提案する.

(2) 学会誌・英文誌執筆者の著作権の学会委譲問題について理解を深めるため,大会時および次回3月理事会まで(関西)に法学者会員司会での講演会を実施する.昨年度評議員会における質問に答える手配をする.

(3) 第一回理事会における論文使用料決定を踏まえ、国立情報学研究所の電子ジャーナル化委託の契約を会長・研究所長間で早期に結ぶ.

これに伴い、未回答の会員に問合せハガキを再送するが、オプトアウト方式とする。

 

5.入会資格について,改めて検討し提言を行う

(1) 修士課程在学までの入会希望者について,その入会の是非などについて

  案:準会員制度を設け、修士課程在学者は口頭発表のみ認め、学部生は発表権がないものとする。

(2) 政党所属現役議員などの入会の是非などについて

  入会については認め、役員にはなれないというNPO方式を検討する.

6.名誉会員について

(1) 推薦者

(2) 会則改正

  案:理事3選+創設に準ずる多大な貢献。選挙前世代はこれに準ずるか、創設貢献による。

  論点=選挙世代に関する実質的基準および人数。

 

7.理事会・調整会議内規を確認し明文化する

(1) 理事旅費規程(校費消尽後に交通費半額を支給する)

(2) 部門委員選定規程(指名=会長・立案=部門長、調整会議で調整案=全理事+評議員、理事会承認)

(3) 各種公募規程 学会誌、英文誌、大会発表・ワークショップ(大会開催要項)

(4) 科研費研究成果公開発表実施要綱

・担当順=関東、関西/他地域

[計画(25部:11月)・申請(口座開設:四月)・報告書(30日以内)、収支基準遵守、決算5書類、書類5年保存、資金管理(合算使用の制限)]

C 委員会メンバー

委員:一戸真子,黒須三恵(再),平野武(再),宮越一穂(再),盛永審一郎

支部開設検討委員(評議員)(案): (順次、対象地域の会員に委嘱する)

 

 

*委員以外の人名や外部(出版社)などに関する事項は、一部省略した報告・方針ました。

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2004-6年度活動:前委員長 長島隆(東洋大学)

国際学術交流委員会報告I-2

2006年10月21日

国際学術交流委員会委員長

   長島 隆

  まず第1に、理事会および評議員会に対して、わたしが本委員会を担当して付託された課題である「国際誌」の刊行が達成され、第2号の準備に入っていること を報告しておきたいと思う。この点に関して若干の報告を行い、創刊号、第2号の準備のなかから浮かび上がってきた問題点を指摘して、次期委員会に引き継ぎ たいと考える。そのまえに、わたしがこの委員会を継承した最初の報告「国際学術交流委員会報告I-1」での問題点を参照していただくべくお願いするとともに、創刊号で不備が生じたことをお詫びしておきたい。

1.国際誌の刊行

国際学術交流委員会は、数年にわたる本委員会に付託された「国際誌」の刊行という課題をこの7月に創刊号を刊行することによって達成することができた。

①          創刊号は、エディとーリアル1本、論文4本で構成された。その詳細は前理事会で報告済みなので今回は省略する。なお、論文1本に関して特殊文字のための誤植が生じ、執筆者に迷惑をおかけしたことをお詫びする。また今後印刷に入る前に、通常の編集のやり方である執筆者の確認を行うことで今後に期する。

②          現在、創刊号は重要な外国機関に送付中である。

③          第2号は、新たな編集委員会体制で、創刊号刊行後直ちに募集を開始し、多くの応募者があった。厳正な第1次査読の上、採択論文を決定し直ちに執筆者に査読表をつけ依頼した(応募数15、採択数8)。英語の本論文の提出期限が1月であり、その後直ちに第2時査読に入り、執筆者とやり取りをしながら、ネイティヴチェックをおこなう予定であり、来年7月に刊行する予定である。

編集委員会の構成:粟屋剛、岡本珠代、酒井明夫、霜田求(編集長)、長島隆

2. 問題点

①まず応募者の数の問題

この点ではすでに創刊号段階で、8名の 問い合わせがあったが、実際に掲載まで行った方は4名であったこと。この点で、やはり、本委員会および理事会の姿勢が問われる問題が浮かび上がってきてい ることである。つまりすでに、この「国際誌」の問題は、世代交代した第1期である桝形会長時代からの課題である。だが、この課題が実現することにたいする 躊躇が理事会ならびにこの委員会にあったことは否めない。このことが、「国際誌」を実際に本学会が刊行するつもりなのか、刊行できるのかといううたがいを 会員に与えていたことがこういう状態を引き起こしたといわねばならない。

他方で、問い合わせ数と第2号での応募者数から見ても会員の中には、「英文で論文を書くこと」にたいする意欲と願望があることは否定できない。そうする と、本理事会は、こういう会員の潜在的な意欲と願望に答えることができるかどうかが問題とならざるをえない。その点で、会員の要求に対して答える姿勢をわたしを含 めてこれまで世代交代し新しい世代が理事会を継承しながら、この世代交代そのものが疑われざるをえないという厳しい自己批判が必要とされると思う。この点 をまず指摘しておきたいと思う。何よりも理事会は、会員の要求に、そして評議員の要求に積極的にこたえることによってのみ存在意義があるといえるだろう。 そういう意味でもなかんずく理事会はこういうが委員の要求を徹底して尊重し課題化して、それを実現すべく権限を付託されているのだということを改めて肝に 銘じる必要があると考える。

②われわれはなぜ欧文で論文を書くのか

A.すでに先の報告(I-1)で 述べたように、この点では、われわれがこの学会の中心テーマを「医学と哲学」の交差する点においている。このことが、われわれの課題を明らかにする。バイ オエシックスがアメリカから発信されてきたとしても、日本の医学が、やはり世界的に重要な位置を占めていることを重視しなければならない。つまり「日本と いう特殊性」から出発しながら、われわれは国際的な議論に参画することを義務付けられていることである。この点では、日本の自然科学者、医学者たちが国際 的なレベルでディスカッションし、また外国の研究者をそのように遇していることが必然的にわれわれにもそのようなレベルでの議論を要求していることであ る。そして、日本の研究者にそういう期待をも寄せていることは直視するべきである。果たしてわれわれはこの課題を実現することができるかどうか。

このことが「われわれはなぜ欧文で論文を書くのか」という問題の含意であるといえよう。それは医系大学に在職していたわたしにはよくわかる。実際応募数の 増大から言えば、直接には所属する大学からの明示的、潜在的な要求があり、それを自覚しているがゆえに応募してきているといえるのではないか。そうだとす れば、応募者はますます増大すると考えなければならない。

だが、この点でわれわれが注意をしなければならないのは、第1に、そのような外的要求をもう一度「何のためにだれに向かって論文を書くのか」という問題で ある。まず、何のためにということは明確に論文を書くことの意味を規定する。すなわち、本学会の「英文誌」の場合は、まさに、国際的なレベルでの議論に日 本から参画し、議論の深化のために貢献することである。

だが、この点で、この間の査読のプロセスでも明らかになったことであるが、執筆者自身が自らの議論を英語で書くことの意味をもっと明らかにすべきだという ことである。発信する「新しさ」をきちんと検証しておく必要があると思われる。それはすでにアメリカから発信されて30年以上の歴史があり、ドイツなら ば、医学史を学として確立する時点から見れば100年以上の歴史がある。きちんと「新しさ」をこういう研究の歴史のなかで位置づけることが必要である。

それと同時に自らの議論が依拠しているこれまでの議論をきちんと自覚化させ、それをどう革新するのかを自覚化させながら書くことである。

医療系の研究者の場合も、対象の新しさに依存することなく、議論の積極性をつねに解明するように努力することが重要である。

「医療倫理」という場面では、どうしても医療系の研究者も哲学形の研究者も異なった困難を抱えているけれども、こういう自ら抱える困難を研究の共同の中で克服していくことが重要なのではないか。

さらに、この点で、「だれが」という点がきわめて重要である。つまり、われわれが必死で読んでいる文献がすでに共有のものとなっている研究者の人たちだと いうことである。つまり、英文の論文ではかなり議論の前提となっていることがあることである。だから、日本人に書く場合にはまだ知られていない場合にどう してもその文献の内容紹介が必要になるが、外国語文献の場合にそういう内容紹介的な議論が必要かどうかである。

こういう点をよく吟味しながら自らの議論を論文として構成していく作業がどうしても必要なのではないか。

B.ネイティヴ・チェックの問題

若い世代の研究者にとって、ネイティヴ・チェックを 義務付け、かつ本学会の機関誌と同じ執筆料に該当する買取を義務付けることはこくなのではないかという議論はよく聞いている。だが、この点で、いくつかの 点を重視すべきだと考えている。すなわち、ネイティヴ・チェックを金銭の問題に解消してはならないということである。ネイディブ・チェックは本来、外国人 との研究の共同においてはじめて真のチェックは可能になるのではないかと考える。この点をよく考えなければならないだろう。たしかに金銭が介入するかもし れないが、ネイティヴ・チェックは、本来、議論を前提する(論文執筆過程と同様に)。 そういう関係をわれわれが日本で研究する、われわれが外国で研究する際に直面する困難を彼らも抱えているといわなければならない。文化の相違を超えて、お そらくわれわれはこういう研究の共同を形成することが重要になるだろう。そういう意味で、はじめは単なる英語のチェックであるとしても、各過程でこういう 研究の共同を形成し、そこで始めて英語で論文を書く意味も明らかに成ってくるといわなければならない。

この「文化の相違」という点に、われわれは外国語で書きなれているかどうかをはなれて、すべての執筆者に「ネイティヴ・チェック」を応募の際に義務付けて いる。これはすでに第1戦で活躍している執筆者には不愉快かつ不満の温床になるかもしれない。だが、あえて言えば、そのような研究者の方にこそ必ずネイティブ・チェックを受け、こういう共同の先端に立っていただきたいと思う。それと同時にやはり言葉の問題はこの「文化の相違」という点にこそあり、このことがまだ十分に理解されていない段階では(これはなにも外国と日本という大きな意味だけではなく、東京と東京外、都会と地方でもあると思われる)、やはり謙虚の自らの語学力を磨いている姿をやはり若い世代には示していただきたいと考える。

そして、私自身自分が院生時代を思い出すのは、自分も先輩の院生に論文を読んでいただき、批評を受けたし、あるいは朱まで入れていただいた経験があるし、 また逆に後輩の院生にたいして同様に振舞ったこともある。こういう関係を外国人との関係でも作り上げることの重要性を再認することが重要である。

最近は「外部資金の導入」が喧伝され、かなりの研究者がこういう資金を受けていると思われる。こういう導入の対象となった研究に若い研究者をも入れ、そこ から、英語で論文を書くことを目標点としてあげ、そのような努力とアドヴァイスによって若い研究者の財源の保証も可能にすることも可能ではないか、さまざ まな形で、たしかに自らお金を出すことが大変な若手研究者もまた十分本雑誌に応募することが可能となる条件を作り出すことことこそ重要だと考える。

C.すでに、前期報告で指摘したように、現段階の研究者養成においていまだ「欧文で論文を書く」トレーニングは目標としてあげられていないが、すこしづつこういう方向が出てきている。

だが、これがうまくいくかどうかはかなりの点で疑問があるといわなければならないだろう。義務教育課程にまで英語教育を導入しようとする改革が日本でも進 んでいるが、そういうシステム形成とカリキュラムがないところで、こういうことをおこなっても、おそらく失敗するだろう。

そういう課題を掲げながら実際は個人負かせという現段階で、われわれの学会の課題は重い。正規教育の目標と「欧文で発信すること」をつなぐことこそが本学会に課せられた課題であるといわなければならない。

③残された課題

以上からわれわれの委員会は、次の課題が今後の課題として残されているといわなければならない。

A.      すでに前 期報告でも述べていた「英文論文作成講座」システムの構築である。これはできるだけ、速やかに実現することが重要だろうと考える。とりわけ、英文で論文を 書こうとする会員が、英語で書く際の手ほどきをしていくことは重要であり、実際書こうと思っても躊躇してしまうのが現実である。その点でこのシステムは重 要な役割を果たすだろうと考える。

B.      「依頼原 稿」の条件を明確にすること。これは今後応募者が増大することが考えられ、その際、できるだけ積極的に会員の論文を掲載していくことは本雑誌の課題でもあ るといえるだろう。いずれ年2号刊行はすでに課題として上がっているが、そのとき、本数が足りなくなる、あるいは論文を巡る執筆者と編集者のやり取りなど から1冊には足りない場合もありうる。そういう意味では、日本人、外国人への依頼原稿を掲載することによって安定的に雑誌刊行を保証することが重要であ る。

この点では本学会誌の機関誌編集委員会も「依頼原稿」規定を持ちながら、まだ実現できていない。この点では、編集委員会、国際委員会、そして運営委員会の中でこの条件を明確にすることが必要だろう。

C.年2冊刊行の速やかな実現。

これはBで述べた現実を克服する上でも重要であるが、当初からの課題でもある。だが、この点で、やはり財源の問題があることを指摘しておかなければならない。本委員会が国際誌刊行の課題を付託された際には、この点でも本学会の課題も明示されていた(次の項参照)。まず、Bとの関連で、年2号刊行とすると何本程度の掲載が可能か、またそのために依頼原稿はどの程度必要とするかも明らかにしなければならないだろう。この点ではやはり事務局と相談の上解明していくことが必要だろうと考える。

D.学術振興会からの助成の回復。

これもまたCとの関連で、解明することが必要である。現実に助成はどの程度の条件で実現可能かを明らかにし、逆算的に本学会の国際誌がそれを可能にするためにはどの程度の雑誌にするかを明らかにすることが重要である。

E.理事会、および評議員会からの抜本的なてこ入れの必要。

この点は第1に、積極的に役職者が応募するようにしてほしい(査読は平等である)。第2点としては、やはり依頼原稿の問題である。この依頼原稿は現段階で基準が明確ではないが、これまでの議論を踏まえれば、基本的に役職者に依頼することになるだろう(この場合も無審査はありえない)。そのために、Bの条件を明らかにすることを前提に、できるだけ多くの役職者に依頼にこたえていただきたい。第3に、やはり財源の問題である。編集委員会がおこなうネイティヴ・チェック代を含め、本雑誌の刊行費も委員会費とは別枠で予算化していただきたい。当然この点は、この後のこの雑誌の刊行の実績を前提するし、かつ3役および運営委員会と議論を重ねて可能性をシミュレーションすることが前提である。

3.        国際委員会のそのほかの課題

①          国際学会との交流の強化

この課題はこのかんほとんど前進がなかった。事務局の努力で毎年European Society of Philosophy and  Ethics in Health Care and Medicineの大会予告が見られるようになっている。だが、この学会への参加をできるだけ促進 していくようにする必要がある。

②          韓国、中国の当該学会との連携の強化

現在この点では創刊号をおくる活動を準備している。できるかぎり、これらの学会とは人的交流を含め、連携を強化していくこととする。

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前委員長 松島哲久(大阪薬科大学)

『第1回臨床倫理・ケア研究会プログラム』のお知らせ
「臨床倫理~現在とケアとの接点」をテーマとし、第1回臨床倫理・ケア研究会を開催いたします。ご関心のある方のご参加をお待ちしております。

テーマ 「臨床倫理~現在とケアとの接点」

日時  2005年12月24日(土曜日)
午前10時開始 (~午後5時終了) (開場 午前9時30分)
場所  東洋大学6号館1階第3会議室(東京都文京区白山)
http://www.toyo.ac.jp/campus/index.html

プログラム
開会の挨拶 研究委員会委員長 松島哲久
研究発表
(座長 岡本天晴)
1.冲永隆子 10時から10時45分
2.伊藤幸郎 10時45分から11時30分

( 座長 棚橋實)
3.清水哲郎 11時30分から12時15分

(昼食)

( 座長 木阪昌知)
4.藤野昭宏 1時から1時45分
5.松島哲久 1時45分から2時30分

(座長 尾崎恭一)
6.前田義郎 2時40分から3時25分
7.朝倉輝一 3時25分4時10分
総合討論 司会 岩倉孝明 4時10分から5時
総括 松島哲久

『理想』第675号 執筆者と目次(関係者のみ)
冲永隆子 スピリチュアル・ケア-末期がん患者へのこころのケア
伊藤幸郎 臨床倫理試論-日本における意義
清水哲郎 臨床倫理という営み
藤野昭宏 臨床倫理としての共感的態度教育の実践と思想-「医療面接」教育の根源を探る
松島哲久 臨床医学とケアの倫理
前田義郎 重症障害新生児の選択的治療停止の問題-治療義務の限界に関する義務論的アプローチ
朝倉輝一 ケアリング・功利主義・対話的普遍性
(参考文献 『理想』2005 第675号「特集 臨床倫理の現在」)

交通  都営地下鉄三田線「千石」駅
A1出口から「正門・西門」徒歩8分
都営地下鉄三田線「白山」駅
A3出口から「正面・南門」徒歩5分
A1出口から「西門」徒歩5分
主催  日本医学哲学・倫理学会研究委員会

※参加費は無料で、一般の方の参加も可能です。直接会場へおこしください。


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第2代委員長 森下直貴(浜松医科大学)

日本医学哲学・倫理学会/研究委員会主催/研究会の履歴
第1回研究会
討議テーマ:ケアの倫理-現段階と課題
日時:2003年8月29~30日
場所:浜松医科大学半田山会館
主催責任者:研究委員会委員長 森下直貴(浜松医科大学教授)
プログラム
第1日目
シンポジウムを振り返って
総括的問題提起
ケア論の現状 松島哲久
ケア論の課題 石井誠士
ケア論の展開(1)
宮脇美保子

第2日目
ケア論の展開(2)
浜田 正
岩倉孝明
加藤直克 ほか
全体討議・ケア論の構築へ向けて

第2回研究会
日時:2004年3月27~28日
場所:京大会館
参加者23名

1.開会の辞
森下直貴:ケアと臨床・科学・社会・宗教(前回のまとめ)

2.学会誌の合評(1)
報告:勝山貴美子、永田、宮脇美保子 司会:倉持武

3.研究報告
宮越:私の在宅医療 司会:森下直貴

4.学会誌の合評(2)
報告:岡本珠代、石井誠士、真継 司会:松島哲久

5.研究報告
和田恵美子:ナラティヴの基礎づけ
西村ユミ :看護ケアの現象学的アプローチ
朝倉輝一 :ケア概念と討議倫理
司会:松島哲久

6.閉会の辞:森下


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